お知らせ

COLUMN
コラム

文化

そばと酒は相性抜群!そば前の歴史やそば屋飲みの作法・お酒の楽しみ方

この記事の監修者

監修者画像

有喜屋 三代目店主

三嶋吉晴

有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。

詳しくはこちら

「そば屋飲みは通が好む」と言われるように、そば屋飲みは粋でおしゃれな人が楽しむ食べ方の一つです。そばとお酒が互いに引き立て合い、どちらもさらに美味しく頂けるそば屋飲みは、日本人が独自に作り出した粋で理にかなった食文化といえるでしょう。

この記事では、そばとお酒を一緒にいただくそば屋飲みの魅力や作法と合わせて、ルーツとなった江戸時代の「そば前」の歴史やそば屋飲みで相性の良いお酒についても詳しく解説します。

1. そばと酒の相性は抜群!|そば屋飲みのススメ

まずは、そばとお酒の組み合わせがなぜ多くの人に愛されるのか、その理由と合わせて、そば屋のみの作法について見てみましょう。

(1)そばと酒の相性が良い理由

そば屋飲みは江戸時代から受け継がれる粋な食べ方ですが、2つの点からもそばと酒の相性はとても良いとされています。

まず一つ目が栄養面です。そばにはお酒を飲む人の体を労わる栄養が特に豊富に含まれています。毛細血管を強くして動脈硬化を防いでくれるルチンやビタミンE、胃を修復するナイアシン、胃腸に長く留まりアルコールの吸収を穏やかにする食物繊維など、お酒を飲む人の体を労わる栄養が特に豊富です。

つまり、そばとお酒は、体を労わりつつおいしく楽しめる、相性抜群の組み合わせです。お酒好きにとっても、そばを肴に飲むお酒はまさに「百薬の長」となり、健康的に楽しめる飲み方と言えるでしょう。

もう一つが、味です。そばの香りとコシのある食感がお酒の風味を引き立て、お酒の味をより一層楽しませてくれます。 逆に、お酒の風味がそばやおだしと組み合わさると複雑で奥深い味を作り出し、それぞれを単品で楽しむ以上の旨味が引き出されます。

このように栄養面と味の面で、そばとお酒はお互いに相手を引き立て合うベストなコンビといえるでしょう。

(2)そば屋飲みの作法

そば屋飲みの作法は、現在は特にありませんが、2つの楽しみ方があります。

  • そばの注文の前に酒とつまみを頼み、〆にそばを頼む
  • そばと酒とつまみを一緒に頼む

そばが来るまでにお酒とつまみを先にいただき、出来上がったそばをささっと食べる楽しみ方、まとめて注文して自分のペースで自由にいただく楽しみ方があります。自分の好みのスタイルで楽しむのが最大のそば屋飲みの作法であり、醍醐味といえるでしょう。

また、そば屋飲みで飲むお酒は、基本的には日本酒とされていますが、特に決まりはありません。そば屋によって飲めるお酒が異なり、様々な組み合わせで楽しめるのもそば屋飲みの面白さの1つです。

2. そばの前にちょっと一杯!江戸時代発祥の江戸っ子文化『そば前』とは

そば屋飲みは、江戸時代から続く粋な文化「そば前」がルーツになっています。ここではそば前とは何かと、そば前で人気があったつまみを紹介します。

(1)そば前とは

そば前とは、その名の通り、そばをいただく前に軽くお酒を楽しむ食文化です。ちょっとしたつまみ・肴でお酒を1~2本飲み、仕上げにそばをさっと食べて〆るというスタイルが江戸っ子流とされ、粋な習慣として親しまれていました。

この食文化が生まれた背景には、そば屋のおもてなしの心があります。そばはお店で注文してから提供までに時間がかかるため、短気で有名な江戸っ子が待ち時間にイライラしないようにと、そばが出来上がる前に軽くおなかに入れられるおつまみと、待ち時間に気分よく飲める上質なお酒を用意したのが始まりです。

江戸末期の本『江戸自慢』にも、「必ずそば屋には酒あり。しかも上酒なり」と記されており、現在のように気軽に立ち寄れる居酒屋文化がなかった江戸時代にそば屋で頂くおいしいそばと酒は江戸っ子の欠かせない娯楽の一つであったそうです。

(2)そば前の人気のつまみ・肴

そば前では、上もののお酒と一緒に次のような軽くつまめるものが好まれました。

  • 板わさ
  • 焼き海苔
  • そば味噌
  • 玉子焼き
  • 天ぷら
  • ぬき

この中でも面白いのが「ぬき」です。ぬきとは鴨南蛮そばや天ぷらそばのかけつゆと具材のみのもの(そばを抜いたもの)で、そばがのびる心配をせずに食べられると人気のつまみでした。

この江戸時代に生まれたそば前の食文化は、明治・大正・昭和・平成を経て、令和の今もそば屋飲みとして受け継がれています。

3. そばに合うお酒を紹介

最後に、そば屋飲みにおすすめのそばに合う以下のお酒を紹介します。

  • 日本酒
  • 焼酎
  • ワイン

(1)日本酒

そば屋飲みの定番と言えば日本酒です。現在のそば屋でも日本酒を置いているところが多いようです。

タイプとしては、淡麗辛口などのそばの味を引き立てつつ自身の味も引き立てるような、キレが良く穏やかなタイプがおすすめです。

楽しみ方も様々で、そば前としてつまみや肴と一緒に楽しんだり、そばと一緒に楽しんだりします。また、そばを食べ終わった後にそばつゆに少し日本酒を加えて、出汁割りにすると、味の基本である五味(旨味・甘味・酸味・苦味・塩味)が揃って複雑で奥行きのある味わいが楽しめます。

また、暑い夏はキンキンに冷やした冷酒や寒い冬は体の芯から温める燗酒など時期によって飲み方を変えればさらに季節を感じながらお酒を楽しめることでしょう。

(2)焼酎

そば屋飲みには、焼酎も相性抜群です。

焼酎には、米焼酎・芋焼酎・麦焼酎・そば焼酎などさまざまな焼酎がありますが、中でも麦焼酎とそば焼酎がおすすめです。

麦焼酎はスッキリとした味わいでそばの風味を引き立ててくれますし、そば焼酎はそばと同じ原料で作られているので相性も抜群です。焼酎の香りや味を楽しみつつ、そばの風味もしっかり感じることができます。

また、そば屋飲みでそば焼酎を頂くなら、食後にそば湯にそば焼酎を加えた「そば湯割り」もおすすめです。

(3)ワイン

意外とそばと合うのがワインです。最近では、そば屋のみでワインを提供するお店も増えています。

ワインのコクがそばのうまみを引き立てるだけでなく、昆布の旨み成分グルタミン酸やかつお節の旨み成分イノシン酸などを含むそばのつゆがワインの味わいを引き立てて、いつもとは違ったそばの楽しみ方ができることでしょう。

有喜屋でそばとお酒を楽しみませんか?

有喜屋では、四季折々の風情を感じながらお食事を楽しんでいただけるよう、趣向を凝らしたそば料理を多数ご用意しています。

有喜屋の京都そばは、お酒との相性も抜群で、粋なそば屋飲みをゆっくり楽しんでいただくために、そばと相性の良い日本酒や、焼酎(蕎麦・麦・芋)、梅酒、ウィスキー、チューハイも各種ご用意しています。

ぜひ、有喜屋の季節の味わいをお楽しみいただき、ご賞味ください。