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そばつゆとめんつゆは別のもの?違いや特徴、そばつゆの歴史や関西・関東の違いを解説

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有喜屋 三代目店主

三嶋吉晴

有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。

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「そばつゆとめんつゆって同じものなの?」
「原材料や味はどのように違うの?」

そばを食べる際に欠かせないものといえばそばつゆです。そばつゆに似たものとしてめんつゆがありますが、そばつゆは「そば専用」、めんつゆは「麺全般(そば以外)」と使い分けている人も多く、なんとなく別物と認識している方も少なくありません。

実際、そばつゆとめんつゆは様々な点で異なります。

そこで今回はそばつゆとめんつゆについて、味や香り、原材料や使い方などの違いとあわせて、そばつゆの意外な歴史や関西・関東のそばつゆの違いなどを解説します。

1.そばつゆとめんつゆの違い

そばつゆとめんつゆ、どちらにもついている「つゆ」とは、「かえし」(醤油・みりん・砂糖で作られたもの)に「だし」を入れて作られたもののことです。

同じ「つゆ」ですが、そばつゆとめんつゆには様々な違いがあります。その違いを以下の4点から解説していきます。

  • 味や香り
  • 原材料
  • 使い方
  • 保存方法

 

主な用途 味の特徴 味の濃さ
そばつゆ ・そば専用 ・しっかりした醤油の味
・甘辛い
濃い
めんつゆ ・うどん、そうめん、冷やむぎなどの麺全般
・料理の調味料
・だし味が強め
・まろやか
薄い

(1)味や香りの違い

そばつゆとめんつゆは見た目は同じに見えますが、味や香りに違いがあります。

そばつゆ:醤油感が強く、甘辛く濃いめの味が特徴。「だし」の風味は控えめ。
めんつゆ:そばつゆと比べて塩味や甘味も控えめ。「だし」の風味も利いている。

めんつゆと比べて、そばつゆが「だし」の香り・風味が控えめ、かつ、はっきりした濃い味で作られるのには理由があります。

  • そばの香りを引き立てつつ、そばの風味に負けないため
  • つゆが絡みにくいそばでもしっかりつゆの味を楽しめるようにするため
  • そばはつゆを少量つけて食べるものであるため

そばつゆは「だし」を控えめにすることで、そば本来の香りや味を邪魔することがないように作られています。

また、うどんやそうめんなど小麦粉で作られた他の麺類と比べ、そばはつゆが絡みにくい特徴があります。さらに、そばはつゆを少量をつけて食べるものであることから、少量でもしっかり味わえるよう濃い味つけになっているのです。

(2)原材料の違い

そばつゆもめんつゆも、基本的に原材料は醤油・みりん・砂糖・だしの4つで作られているため、そばつゆとめんつゆは使われている原材料は同じものです。しかし、「かえし」の原材料である醤油・みりん・砂糖の分量と「だし」の量が異なります。

そばつゆはみりん・砂糖を多めに配合した「かえし」を使っており、さらに「かえし」に入れる「だし」の量も控えめとなっています。一方、めんつゆは、「だし」の配合量が多く作られています。

(3)使い方の違い

そばつゆとめんつゆには使い方にも違いがあります。そばつゆはそば専用のつゆ、めんつゆはそば以外の麵類(うどん、そうめん、ひやむぎなど)全般に使われるのが一般的です。

また、めんつゆは含まれるだしの量も多く、醤油の尖りが取れたまろやかな味となっていることから、肉じゃがや親子丼など他の料理にも使える万能調味料としても使われることも多いです。

(4)保存方法の違い

そばつゆもめんつゆも、保存方法に違いはありません。アルコールの入ったみりん、酒などの調味料と比べると傷みが早いため、開封後は冷蔵庫に入れてなるべく早く使い切らなければならないのも同じです。

2.そばつゆの意外な歴史

今では当たり前のように使われているそばつゆですが、実は昔のそばつゆは「かえし」と「だし」で作られた醤油ベースのものではありませんでした。

そばが庶民の間で爆発的に広まったと言われる江戸時代の文献によると、当初は「かえし」と「だし」を使ったそばつゆではなく、味噌に水を入れて煮詰めて濾した「垂れ味噌」に削った鰹節を加えて煮詰めて濾した「煮貫」というものをそばつゆとして使っていたと記されています。現代では、そばつゆを「タレ」ということがありますが、これは「垂れ味噌」を略して「タレ」と呼んだ名残ともいわれます。

その後、味噌ベースのそばつゆに加えて、今のような醤油と酒と水を使った醤油ベースのそばつゆが開発されたようです。江戸時代のどの時点からかははっきりしていませんが、徐々に味噌ベースのそばつゆを使われなくなっていき、今と同じ醤油ベースのそばつゆが主流となっていきました。

参考:そばの散歩道「江戸のそばつゆ」

3.関西と関東のそばつゆの違い

同じそばつゆでも、関西と関東でも味が違うと言われています。関西では色が薄く出汁の味が濃いやや甘めのそばつゆ、関東では色が濃く味も濃い目のそばつゆが主流です。その違いは、使われる「だし」の違いによるものです。

一般的に関西の「だし」は「飲むだし」とも言われ、色は薄めですがしっかりと風味を聞かせたもの、関東の「だし」は「つけるだし」と言われ、色が濃く味が辛めであるためです。ちなみに「だし」の違いは次の3つの理由から生まれたものといわれています。

  • 水の違い
  • 削り節の違い
  • 「かえし」に使う醤油の違い

関西の「だし」は鰹節や昆布だしの味を引き出せる軟水を使っており、醤油も塩分濃度が高い薄口醤油を使って作られています。関東はだしの味が出にくい硬水を使い、削り節は分厚い鰹節を長時間炊きこんで煮詰めて作った濃い鰹節のエキス、醤油も溜まり醤油を使っています。この違いにより「だし」の味に大きな違いが生まれ、そばつゆの味にも違いが生まれるのです。

関西 関東
軟水 硬水
鰹節や昆布 鰹節
薄口醤油 溜まり醤油

関西と関東の出汁の違いはこちらの記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。

【京都そば職人が解説】関西と関東の出汁の違いと美味しいそば湯の飲み方

おいしいそばとそばつゆを楽しむなら有喜屋で

この記事ではそばつゆとめんつゆの味や風味、原材料などの違いと合わせて、そばつゆの意外な歴史や関西と関東のそばつゆの違いについて解説しました。

有喜屋では素材と技術にこだわったそばを提供しております。そばと、うるめいわし・さば・かつお(宗田鰹)の削節を使用したコク深い味わいのそばつゆと織りなす洗練された味をお楽しみください。また、有喜屋オンラインショップでは、ご家庭でも気軽にそばを楽しんでもらうため、そばやそばつゆを販売しております。有喜屋のそばをぜひご堪能ください。