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せいろそばの「せいろ」とはどんな意味?ざるそばとの違いも解説!
この記事の監修者
有喜屋 三代目店主
三嶋吉晴
有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。
「せいろそばのせいろってどういう意味?」
「せいろそばとざるそばの違いって?」
そば料理の中でも、「せいろそば」と「ざるそば」は特に人気があります。しかし、これらの違いについて詳しく知っている人は多くはないでしょう。そこでこの記事では、せいろそばの「せいろ」とは何か、そしてせいろそばとざるそばの違いについて詳しく解説します。
1. そもそもせいろとは?
せいろとは、蒸し器の一種で、木製や竹製の四角いもしくは丸い容器です。お湯を沸かした鍋の上に置き、蒸気で食材を蒸すために使用されます。せいろの特徴は、蓋が格子状に編み込まれており、蒸しあがった後も水分の調整をしてくれる点です。これにより、せいろ全体に蒸気が行き渡り、食材がふっくらと蒸しあがります。
せいろは主に和菓子や中華料理で使用されますが、かつてはそばを蒸すのにも利用されていました。江戸時代には、せいろで蒸した十割そばが一般的でしたが、十割そばはそば粉のみで作られるため、茹でると切れやすいという特徴がありました。そのため、せいろで蒸してそのまま提供されることが多かったのです。
2. せいろそばとは?
せいろそばとは、せいろに盛って提供されるそばのことを指します。現代では蒸す工程は省略されていますが、せいろに盛られることからこの名が残っています。江戸時代には、せいろで蒸した十割そばが一般的で、そのまま提供されることが多かったため、「せいろそば」という名称が定着しました。せいろそばは「もりそば」とも呼ばれることがあり、もりそばとは、お皿やせいろに盛られたそば全体を指します。
3. せいろそばとざるそばの違い
せいろそばとざるそばは、どちらも日本の伝統的なそば料理ですが、その最も顕著な違いは提供される器にあります。せいろそばは、その名の通り「せいろ」と呼ばれる器に盛られて提供されます。せいろは蒸気を通しやすい構造になっているため、せいろに盛られることで、そばの風味や食感を保つ効果があると言われています。
一方、ざるそばは竹製のざるに盛られて提供されます。ざるは水切りが良いため、茹でたそばの余分な水分を効果的に切ることができます。これにより、そばがべたつかず、のどごしの良い食感を楽しむことができます。
現代では、せいろそばとざるそばの区別が曖昧になっている場合もあります。多くのそば屋では、せいろに盛られていないそばも「せいろそば」として提供されることがあり、逆にざるに盛られたそばが「せいろそば」として提供されることもあります。しかし、本来の器の違いを理解することで、せいろそばとざるそばそれぞれの特徴や魅力をより深く味わうことができるでしょう。
4. せいろそばとざるそばの関係性を歴史から紐解く
江戸時代初期、そばは団子状の「そばがき」として食べられていましたが、そば切り(現在のそばの形状)が普及し始めました。しかし、先述したとおり、十割そばは茹でると切れやすいため、蒸して提供されることが一般的でした。蒸すことで、そばの香りや甘みが引き立ち、もっちりとした食感が楽しめました。
江戸時代中期になると、小麦粉をつなぎに使った二八そば(そば粉80%、小麦粉20%)が広まりました。二八そばは茹でても切れにくくなったため、せいろで蒸す必要がなくなりました。この結果、茹でたそばをざるに盛って提供する「ざるそば」が誕生し、広く普及しました。
ぜひ有喜屋のせいろそばをご賞味ください
この記事では、せいろそばの「せいろ」とは何か、そしてざるそばとの違いについて詳しく解説しました。せいろは、もともと蒸し器として使用される木製や竹製の容器であり、江戸時代には十割そばを蒸して提供するために用いられていました。現代では、蒸す工程は省略されていますが、せいろに盛られることでそばの風味や食感を保つ役割を果たしています。一方、ざるそばは竹製のざるに盛られ、余分な水分をしっかりと切ることで、のどごしの良い食感を楽しむことができます。
有喜屋では、単にせいろそばだけでなく、脂と肉部分どちらも臭みやクセのない滋賀県初の国産ブランドの鴨肉を使用した「鴨せいろそば」も提供しています。もちろんざるそばも提供していますので、ぜひこの機会に有喜屋の手打ちそばをご賞味ください。