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京都名物『にしんそば』とは?発祥や京都で生まれた理由、美味しい食べ方を紹介!

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有喜屋 三代目店主

三嶋吉晴

有喜屋(うきや)三代目店主。有喜屋は1929年 京都先斗町に創業した本格手打ちそばと蕎麦料理を提供するそば屋です。 最年少で京都府優秀技能者表彰「京都府の現代の名工」を受彰。 手打そば職人としては全国で初となる「卓越技能章」を厚生労働大臣より受彰。 天皇陛下から授与される褒章である、「黄綬褒章」を拝受。

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「にしんそばって一体どんなそばなの?」
「にしんそばはなぜ京都で生まれたの?」

京都の名物そばといえば、にしんそばです。知名度も人気も高いにしんそばですが、いったいどんな経緯で生まれたのか、どうやって食べればいいのかなど詳しいことについて実はあまりよく知らないという方も多いでしょう。

そこで今回は、にしんそばについて、発祥や京都で生まれた背景、そしてにしんそばの正しい食べ方などを解説します。

1.  にしんそばとは?

にしんそばとは、にしんの干物である身欠きにしんを下ゆでした後、醤油や砂糖、お酒で煮込んで甘露煮にしたものを上にのせていただくそばです。にしんそばには甘みと深いコクがあります。柔らかく煮込まれたにしんが、出汁のきいた蕎麦のつゆに溶け込み、魚の旨みがつゆ全体に広がるため、より複雑で濃厚な味わいが楽しめます。

(1)北海道で生まれた貴重な保存食|身欠きにしん

身欠きにしんとは、北海道で古くから作られているにしんの干物のことです。

江戸時代後期から明治にかけて、北海道沿岸部にはにしんが大量に押し寄せ、にしん漁は北海道の重要な産業の1つとなっていました。ただ、当時は冷凍・冷蔵技術や輸送技術が未発達だったため、水揚げしたにしんを無駄にすることなく長期保存できるように、にしんを干物に加工したのが身欠きにしんです。

身欠きというのは耳慣れない言葉ですが、加工の際ににしんの腹部の身を切り落とす=身を欠くことから名づけられたと言われています。他にも、干すことで余計な水分が抜けてにしんの身が引き締まって骨から取り外しやすくなることから「身欠き」と名づけられたという説もあります。

(2)栄養豊富な身欠きにしん

北海道で作られた大量の身欠きにしんは、日本各地で重宝されました。その理由として、長期保存が可能であること、味が美味しいことの他に、生のにしんよりも栄養が豊富であったことが挙げられます。

  • カルシウム
  • 鉄分
  • リン
  • ナトリウム
  • カリウム
  • EPA
  • DHA

健康食材であるそばに身欠きにしんの甘辛煮に合わせたにしんそばは、栄養面でも優れた食事といえるでしょう。

2. にしんそばの発祥

にしんそばといえば、京都と北海道が有名ですが、もともとの発祥は京都といわれています。

北海道は豊かな海産物に恵まれており、身欠きにしんは北海道の名産品として知られています。しかし、なぜ北海道の特産である身欠きにしんが、京都でにしんそばとして広まったのでしょうか。その理由は京都特有の地形が大きく関係しています。

物流システムが未発達だった時代、四方を山に囲まれた京都では、良質なたんぱく質やミネラル、EPA・DHAなど体に必要な栄養を気軽に補給できる身欠きにしんは貴重な食材でした。そんな栄養豊富な身欠きにしんをもっと身近においしく食べることはできないかと考えたのが、京都にある「松葉」の2代目である松野与三吉氏です。1882年(明治15年)、身欠きにしんを甘辛く煮込んでそばの具としたにしんそばはたちまち京都で人気となり、現在では京都を代表する名物料理となりました。

もう一つのにしんそばの発祥の地と言われているのが、にしん漁で栄えた北海道江差町にある、地元でも有名な200年の歴史を持つ豪商「横山家」です。ただ、もともと北海道ではそばに身欠きにしんの甘辛煮を乗せて食べる風習はありませんでした。京都で生まれたにしんそばのレシピが江戸(東京)に伝わり、そこから江差町に伝わったと言われています。

3. 京都と北海道|にしんそばの違い

京都で生まれ、北海道に伝わったといわれるにしんそばですが、この2つのそばには大きな違いがあります。

(1)京都のにしんそば

京都のにしんそばは、出汁の味が効いた、上品な出汁でいただきます。薄口しょうゆを使って作られるため出汁の色も薄めです。薬味として九条ネギ(青ネギ)を使います。

全国的に温かいそば(かけそば)に身欠きにしんの甘露煮をのせた「にしんそば」が一般的ですが、京都では冷たいそば(もりそば)に身欠きにしんの甘露煮をのせた「冷やしにしんそば」も人気です。

(2)北海道のにしんそば

北海道のにしんそばは、関東風の濃い口しょうゆを使った出汁を使っています。甘味があり、出汁の色も濃い目であるのが特長です。

また、北海道のにしんそばは、白ねぎや刻みのりを添えるのが一般的です。

4. にしんそばの美味しい食べ方

にしんそばは以下のように食べると美味しく召し上がれます。

①そばと身欠きにしんの甘辛煮、出汁の味をそれぞれ楽しむ

②身欠きにしんの甘辛煮をほぐし、身を出汁に絡めて味わう

③身欠きにしんの甘辛煮を出汁に沈め、にしんとそばと出汁の3つの味をなじませていただく

にしんそばの身欠きにしんは、甘辛く煮込んであるため、お箸で簡単にほぐすことができます。まずは、そばを味わったあと、そっと甘辛煮をほぐし、味が凝縮されたにしんの味をお楽しみください。次に、身欠きにしんの甘辛煮に出汁を絡めて味わいましょう。それから、具を出汁に沈め、旨味や風味、脂やコクを出汁全体に広げます。そばのさっぱりした味や出汁の風味とほどよく合わさった絶妙の味をお楽しみください。

にしんそばは身欠きにしんの甘露煮のみで食べるのが基本ですが、お好みで白ネギや水菜、七味唐辛子などを入れるとより美味しく召し上がることができます。また、身欠きにしんの甘辛煮を酒の肴としていただく食べ方もおすすめです。甘辛く柔らかく煮込んだにしんと酒の相性は抜群です。

京都名物のにしんそばは有喜屋でどうぞ

この記事では、身欠きにしんや京都でにしんそばが生まれた背景、発祥の地と言われている京都と北海道の違い、そして美味しい食べ方について解説しました。

有喜屋でも、ふっくら柔らかく煮込んだ身欠けにしんをのせたにしんそばを提供しています。にしんそばの発祥の地である京都ならではのおいしいおそばと上品な出汁、そして身欠きにしんの3つが織りなす洗練された味をお楽しみください。また、有喜屋オンラインショップでは、ご家庭でもにしんそばを楽しんでもらうため、1人前〜10人前のにしんそばを販売しております。有喜屋のそばをぜひご堪能ください。